未来設計ライフプラン

老後の「もしも」に備える:自分で決める安心の将来設計

Tags: 将来設計, 老後, 安心, 判断能力, 任意後見, 家族信託

将来の「もしも」への漠然とした不安を安心に変えるために

人生百年時代と言われる今、私たちは長く豊かな老後を過ごすことができるようになりました。一方で、年を重ねるにつれて、「もしも自分が病気で判断能力が衰えてしまったら、お金の管理はどうなるのだろうか」「介護や医療に関する大切なことを自分で決められなくなったら、誰がどうしてくれるのだろうか」といった、将来への漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

将来への備えは、自分自身が安心して日々を過ごすため、そして大切なご家族に負担をかけないためにも、とても重要なことです。この記事では、判断能力が衰える前に「自分でできる将来への備え」について、基本的な考え方といくつかの方法を分かりやすくお伝えします。

判断能力が衰えると、どんなことが心配になるのか?

判断能力が十分でなくなった場合、ご自身だけで行うことが難しくなることには、以下のようなものがあります。

これらのことができなくなると、ご自身の財産が適切に管理されなかったり、必要なサービスを受けられなくなったりする可能性があります。

「もしも」に備えるための主な選択肢

将来、判断能力が衰えてしまった場合に備えるための仕組みがいくつかあります。大きく分けて、「自分で事前に決めておく方法」と、「後から裁判所が決める方法」があります。

ここでは、「自分で事前に決めておく方法」を中心に、その考え方と、どのようなものがあるのかを簡単にご紹介します。

1. 任意後見制度(にんいこうけんせいど)

これは、将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、「誰に」「どのようなこと(財産管理や生活、介護、医療などに関する手続きなど)」をお願いするかを、ご自身が元気なうちに契約で決めておく制度です。

任意後見制度を利用することで、「自分がお願いしたい人に、希望する内容で」財産管理や生活に関する手続きを任せることができるため、ご自身の希望に沿った形で将来の安心を確保しやすくなります。

2. 財産管理等委任契約(ざいさんかんりとういにんけいやく)

これは、任意後見制度よりも広い範囲で、「判断能力が十分なうちから」、または「判断能力が不十分になった後」の財産管理や生活に関する事務などを、信頼できる人に委任する契約です。

財産管理だけでなく、例えば入院の手続きや施設の見学、親族との連絡など、幅広い事務を委任することも可能です。

3. 家族信託(かぞくしんたく)

ご自身の財産(特に不動産やまとまったお金)を、信頼できるご家族(子など)に「信託(しんたく)」し、そのご家族が「信託契約」であらかじめ定めた目的に従って、ご本人のため、あるいはご家族のために、その財産を管理・運用・処分してもらう仕組みです。

ご自身の財産を「どのように引き継ぎ、どのように活用してほしいか」について、柔軟な設計をしたい場合に有効な方法の一つです。

もし、何も備えをしていなかったら?(法定後見制度)

もし、将来、判断能力が不十分になってしまい、かつ、上記のような事前の備え(任意後見契約など)をしていない場合は、ご本人やご家族などが家庭裁判所に申し立てて「法定後見制度(ほうていこうけんせいど)」を利用することになります。

法定後見制度では、家庭裁判所がご本人の状況に応じて、後見人、保佐人(ほさにん)、補助人(ほじょにん)を選任します。選ばれた後見人等は、ご本人の財産管理や身上監護(介護サービスや医療に関する手続きなど)を行います。

法定後見制度は、ご本人の保護を目的とした制度ですが、後見人等を選ぶのは裁判所であり、必ずしもご自身の希望する人が選ばれるとは限りません。また、財産の使い道などについても、法律や裁判所の監督のもとで行われるため、事前の備えに比べて柔軟性に限りがある場合もあります。

何から考えれば良いのか?相談先は?

将来への備えについて考えることは、ご自身のこれからの人生設計を考えることでもあります。すぐに全てのことを決める必要はありません。まずは、以下のようなことから始めてみてはいかがでしょうか。

  1. ご自身の状況や希望を整理してみる: どのようなことに不安を感じるのか、将来、誰にどのようなことをお願いしたいのかなど、漠然としたものでも良いので考えてみましょう。
  2. 信頼できる人に相談してみる: ご家族や親しい友人など、信頼できる人に日頃からご自身の考えや不安について話してみることも大切です。
  3. 専門家や公的な窓口に相談してみる: 将来への備えに関する制度はいくつかあり、ご自身の状況によって最適な方法は異なります。分からないことや、より詳しい情報を知りたい場合は、専門家や公的な窓口に相談することをお勧めします。

主な相談先

相談する際は、複数の専門家や窓口の話を聞いてみるのも良いかもしれません。

まとめ

将来、判断能力が不十分になった場合に備えることは、ご自身が安心して生活を続けるため、そして大切なご家族が困らないようにするために、とても有効な手段です。任意後見制度や財産管理等委任契約、家族信託など、いくつかの方法があり、それぞれに特徴があります。

どの方法がご自身の状況に合っているかは、財産の状況、ご家族の状況、そしてご自身の希望によって異なります。焦る必要はありませんので、まずは「このような備えがあるのだな」ということを知っていただき、少しずつ、ご自身の将来について考えてみる時間を持っていただければ幸いです。

もし分からないことや不安なことがあれば、一人で抱え込まず、信頼できるご家族や、ご紹介したような専門家・相談窓口にぜひ相談してみてください。ご自身で将来への備えを始めることが、安心につながる第一歩となるでしょう。