老後のお金、認知機能低下に備える大切な準備
老後のお金、認知機能低下に備える大切な準備
老後の暮らしにおいて、ご自身で大切なお金を管理できることは、大きな安心につながります。毎日の生活費のやりくり、必要な支払い、そして将来のための蓄えなど、お金に関することは避けて通れません。
しかし、人生が長くなるにつれて、もしも認知機能が低下してお金の管理が難しくなった場合、どうすれば良いのだろうかと、漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。これは誰にでも起こりうる可能性のある変化です。大切なのは、この変化を恐れるのではなく、元気なうちから少しずつ準備をしておくことです。
この記事では、将来、認知機能が低下した場合に備えて、今からできるお金に関する準備について、分かりやすくお伝えします。ご自身と、そして大切なご家族のために、未来への安心を育む第一歩としてお読みいただければ幸いです。
なぜ認知機能の低下にお金の備えが必要なのでしょうか?
認知機能が低下すると、これまで当たり前のようにできていたお金に関する判断や手続きが難しくなる可能性があります。
- 収支の把握や管理が難しくなる: 収入と支出のバランスが取れなくなり、無駄遣いが増えたり、必要な支払いを忘れてしまったりすることがあります。
- ATMやオンラインでの手続きが困難になる: 機械の操作や、インターネットを使った複雑な手続きについていけなくなる可能性があります。
- 悪質な詐欺の被害にあうリスクが高まる: 判断能力が低下していると、巧妙な手口を使った詐欺を見破ることが難しくなります。
- 家族が代わりにお金の管理をする場合の難しさ: 家族がご本人に代わってお金を動かすには、法的な手続きが必要になる場合があります。準備がないと、手続きに時間がかかったり、ご本人の財産を守ることが難しくなったりする恐れがあります。
このような状況になる前に準備をしておくことで、ご自身の財産を守り、ご家族の負担を減らし、安心して将来を過ごすことにつながります。
今からできる具体的な準備
では、具体的にどのような準備ができるのでしょうか。難しいことはありません。まずはできることから少しずつ始めてみましょう。
1. 信頼できる人と話し合うこと
一番大切なのは、ご自身にとって信頼できる家族や友人など、もしもの時に頼れる人と、将来のお金や暮らしについて話し合っておくことです。
- 現在の状況を伝える: どのような金融機関に口座があるか、どのくらいの預貯金があるか、どのような保険に入っているかなど、ご自身の基本的な財産の状況を信頼できる人に伝えておきましょう。すべての詳細を話す必要はありませんが、「どこに何があるか」だけでも知ってもらうと、もしもの時に役立ちます。
- 将来の希望を共有する: もし自分でお金の管理ができなくなったら、誰に、どのように財産を管理してほしいか、どのような暮らしを続けたいかなど、ご自身の希望や考えを伝えておきましょう。
(補足説明)このような話し合いは、お互いの理解を深め、将来の誤解やトラブルを防ぐためにも非常に重要です。すぐに完璧な答えが出なくても構いません。話し合うことから始めましょう。
2. 財産の状況を「見える化」しておくこと
ご自身のすべての財産(預貯金、株式、不動産、保険、年金に関することなど)を分かりやすくリストにしてまとめておきましょう。
- リストを作成する: 金融機関名、支店名、口座の種類(普通預金、定期預金など)、口座番号、証券会社の口座情報、保険会社の名前と保険証券の場所などを一覧にまとめます。不動産があれば、その情報も加えておきましょう。
- 保管場所を伝える: このリストをどこに保管しているか、信頼できる人に伝えておきます。
(補足説明)特別な形式にこだわる必要はありません。ノートに手書きで書き出すだけでも十分です。ご自身が一番分かりやすい方法でまとめてみましょう。
3. 公的な制度について知っておくこと
もし将来、判断能力が十分でなくなってしまった場合、ご自身の財産管理や契約などを本人に代わって行うための「成年後見制度」という国の制度があります。
- 成年後見制度とは: この制度は、家庭裁判所が選んだ後見人などが、ご本人の権利や財産を守りながら、お金の管理や、介護・医療に関する契約などを代わりに行うものです。ご本人が不利益な契約を結んでしまわないように保護する役割もあります。
(補足説明)成年後見制度にはいくつか種類があり、利用するには家庭裁判所での手続きが必要になります。すぐに利用する必要がなくても、このような制度があることを知っておくだけで、いざという時の選択肢として安心につながります。制度について詳しく知りたい場合は、お住まいの地域の社会福祉協議会や、弁護士・司法書士といった専門家に相談することもできます。
4. 任意後見制度を検討すること
ご自身がまだお元気で判断能力があるうちに、将来、判断能力が低下した場合に備えて、ご自身が信頼する人(任意後見人)に、どのような財産管理や身上監護(介護や医療に関する契約など)をお願いしたいかをあらかじめ契約で決めておく「任意後見制度」というものもあります。
- 任意後見制度とは: これは、ご自身の意思や希望をより反映しやすい制度です。将来のことについて、ご自身の意思で準備を進めたい場合に有効な方法です。
(補足説明)任意後見契約は、公証役場で公正証書として作成する必要があります。どのような内容の契約にするか、誰に頼むかなどを十分に検討することが大切です。
5. 日々のお金の管理をシンプルにする工夫
将来に備えるだけでなく、今から日々の生活でのお金の管理を分かりやすくしておくことも有効です。
- 引き落としやキャッシュレスの活用: 公共料金やサービスの支払いを、可能な範囲で口座引き落としやキャッシュレス決済(ご家族の協力のもとなど)にまとめておくと、支払い漏れを防ぎ、多額の現金を持ち歩くリスクも減らせます。
- 家族に協力を依頼: 信頼できるご家族に、定期的に通帳の記帳をお願いしたり、一緒に家計の状況を確認してもらったりすることも、変化に気づくきっかけになります。
(補足説明)無理のない範囲で、ご自身が一番管理しやすい方法を取り入れることが大切です。
まとめ:今からできる小さな一歩が安心につながります
認知機能の低下に備えるお金の準備は、難しく考える必要はありません。それは、これから先の人生を、ご自身らしく、そして安心して過ごすための大切な「もしも」への備えです。
最も重要なのは、一人で悩まず、信頼できるご家族や専門家と情報を共有し、話し合う機会を持つこと、そしてご自身の今の財産状況を「見える化」しておくことです。
すぐに全ての準備を完璧にする必要はありません。まずは、今日お伝えしたことの中から、何か一つでも「これならできそうだ」と思えることを見つけて、小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
これらの準備は、ご自身の将来の「安心」につながるだけでなく、将来、大切なご家族が対応に困ることがないように、負担を減らすことにもつながります。
元気な今だからこそできる準備で、未来の安心を、ご自身とご家族と一緒に育てていきましょう。