老後のお金を計画的に使う:資金枯渇の不安を減らすヒント
老後の貯蓄、計画的に使っていますか?
老後の生活に入り、現役時代にコツコツ貯めたお金を取り崩しながら暮らしている方もいらっしゃると思います。「このお金は、いつまで持つのだろうか」「これから先、思わぬ出費があったらどうしよう」と、漠然とした不安を感じることもあるかもしれません。
将来のことが分からない中で、お金に関する不安を完全にゼロにすることは難しいかもしれません。しかし、ご自身のお金や支出の状況を「見える化」し、計画的に使うための少しの工夫で、その不安を大きく減らすことができるはずです。
この記事では、老後のお金を計画的に使い、資金枯渇の不安を和らげるための基本的な考え方とヒントをご紹介します。難しい手続きや計算は必要ありません。まずは、ご自身のお金の状況を整理することから始めてみませんか。
まずは「見える化」から始めましょう
漠然とした不安の多くは、状況がはっきりしないことから生まれます。老後のお金の不安を和らげる第一歩は、ご自身のお金や支出の状況を具体的に把握する「見える化」です。
1. 今入ってくるお金(収入)を把握する
主に年金が中心になるかと思いますが、他に不動産収入や働いた分のお金があれば、それらも含めて月にいくら入ってくるかを確認します。年金の受取額通知書や通帳などで確認できます。
2. 毎月出ていくお金(支出)を把握する
生活費(食費、光熱費、通信費など)、医療費、趣味、交際費など、毎月定期的に支払っているものを書き出してみましょう。家計簿をつけるのが難しければ、1ヶ月程度、レシートを集めたり、通帳の引き落とし記録を確認したりするだけでも、だいたいの傾向がつかめます。
3. 年間の特別な支出も考える
固定資産税や自動車税などの税金、火災保険料などの保険料、お正月やお盆の費用、冠婚葬祭費、旅行や大きな買い物など、毎月ではないけれど年に数回または数年に一度まとまったお金が出ていく支出もあります。これらを忘れずにリストアップします。
4. 今持っているお金(資産)を確認する
預貯金(普通預金、定期預金)、退職金として受け取ったお金、個人年金、保有している有価証券など、現在持っている資産の合計額を確認します。複数の金融機関に預けている場合は、すべてを合算してみましょう。
これらの数字を書き出してみると、漠然としたお金の状況が具体的な数字として見えてきます。これが、計画を立てる上での大切な土台となります。
どのくらい使って大丈夫か考えるヒント
ご自身の収入、支出、資産が見えてきたら、次に「このお金で、これからどのくらいの期間暮らせるか」という目安を考えてみます。これは「資金寿命」といった考え方と似ています。
例えば、毎月の収入だけでは支出を全て賄えず、毎月あと5万円を貯蓄から取り崩しているとします。年間にすると60万円の取り崩しです。もし現在持っているお金(資産)が1200万円であれば、「このペースで取り崩すと、単純計算で20年くらいは大丈夫かな」といった大まかな目安を持つことができます。(1200万円 ÷ 60万円/年 = 20年)
もちろん、これはあくまで今のペースで変化がない場合の単純な計算です。この先、支出が増えたり、収入が変わったりする可能性もあります。しかし、このような目安を知っておくだけでも、「いつまで持つか分からない」という漠然とした不安が、少し具体的な見通しに変わります。
完璧な計画を立てる必要はありません。まずは、今の生活を維持するために、毎月どのくらいの貯蓄を取り崩す必要があるのか、それを続けていくと資産がどのくらい減っていくのか、大まかなイメージを持ってみることが大切です。
計画的に使うための具体的な工夫
ご自身の状況を把握し、大まかな目安を持てたら、次は計画的に使うための具体的な工夫を考えてみましょう。
- 無理のない「年間の支出目標」を立てる: 毎月の支出に加えて、年間の特別な支出も考慮し、「1年間で貯蓄から取り崩すのは〇〇円までに抑えたい」といった目標を立ててみます。達成が難しすぎる目標ではなく、少し意識すればできるかもしれない、という範囲で設定するのがポイントです。
- 急な出費に備える「予備費」を確保しておく: 医療費や住宅の修理など、予測できない大きな支出が発生する可能性もあります。すぐに必要になるお金とは別に、まとまった予備費を確保しておくと安心です。生活費の半年分〜1年分などが目安と言われますが、ご自身の安心できる金額を考えてみましょう。
- 大きな支出は計画的に行う: 例えば、住宅のリフォームや大きな買い物を検討する際は、予備費に手をつける前に、その費用が年間の支出目標に収まるか、それとも貯蓄全体への影響が大きいかなどを考慮し、慎重に判断することが大切です。必要であれば、リフォーム費用について、公的な支援制度がないかなどを調べることも有効です。
- 国の制度や地域のサービスを賢く利用する: 医療費が高額になった場合に自己負担額の上限が定められている「高額療養費制度」など、老後の生活を支える国の制度はいくつかあります。また、お住まいの自治体が高齢者向けの様々なサービスを提供している場合もあります。こうした制度やサービスを知っておくことで、いざという時の備えになります。
- 必要に応じて専門家にも相談を: ご自身だけで判断するのが難しい場合や、より詳しく知りたいことがある場合は、ファイナンシャルプランナーなどのお金の専門家や、お住まいの市区町村の相談窓口に相談することも一つの方法です。ただし、複雑な契約や手続きには十分ご注意ください。
お金だけでなく、心の安心も大切に
老後のお金を計画的に管理することは、経済的な安心だけでなく、心の平穏にもつながります。お金の不安が減れば、日々の生活をより前向きに、そして心穏やかに送ることができるでしょう。
お金の計画と並行して、健康維持や生きがいづくり、地域とのつながりも大切にしてください。これらは直接的にお金の問題を解決するわけではありませんが、充実した毎日を送ることは、結果的に医療費の抑制につながったり、無理な支出を防いだりすることにもつながります。
まとめ:できることから始めてみましょう
老後のお金の不安をゼロにすることは難しいかもしれません。しかし、ご自身のお金と支出を「見える化」し、無理のない範囲で計画を立て、賢くお金を使う工夫をすることで、その不安を大きく減らすことができます。
完璧な計画を立てようと気負う必要はありません。まずは、家計の状況を書き出してみる、年間の特別な支出を考えてみる、といった「できることから」始めてみましょう。
ご自身のお金の状況を把握し、計画的に使うことで、老後の生活をより安心して、心豊かに送ることができるはずです。この記事が、その一助となれば幸いです。