老後資金を長持ちさせる:計画的な取り崩し方の基本
はじめに:資産を取り崩すということ
長年かけて築き上げてきた大切な資産。いざリタイア後の生活が始まり、そこから少しずつお金を使っていくこと(「取り崩す」と言います)に対して、漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
「このままで大丈夫だろうか?」 「いつか底をついてしまうのではないか?」
そのような不安を和らげ、安心して毎日を過ごすためには、「計画的に取り崩す」という考え方がとても大切になります。今回は、難しく考えずにできる、計画的な資産の取り崩し方の基本についてお話しします。
なぜ計画的な取り崩しが必要なのでしょうか?
計画的に資産を取り崩すことには、いくつかの理由があります。
- 資産の「寿命」を意識するため: 計画を立てることで、今ある資産が、ご自身の今後の生活をどのくらいの期間支えてくれるのか、大まかな目安を知ることができます。これは、安心して生活を送るための大きな一歩となります。
- 資金枯渇のリスクを減らすため: 計画なしに漫然と使っていると、予想以上に早く資産が減ってしまう可能性があります。計画があれば、毎月使える額の目安が分かり、使いすぎを防ぐことにつながります。
- 急な出費に備えるため: 人生には予期せぬ出来事がつきものです。病気やケガ、家の修繕など、まとまったお金が必要になる場面があるかもしれません。計画的に準備しておけば、そのような時にも慌てずに対応できます。
- 精神的な安心感につながるため: 将来のお金の見通しが立つことで、「これで大丈夫だ」という安心感を得られます。これは、日々の生活のゆとりにもつながるでしょう。
計画的な取り崩しのための3つのステップ
では、具体的にどのように考えれば良いのでしょうか。まずは、難しくない3つのステップから始めてみましょう。
ステップ1:今ある資産全体を確認しましょう
まずは、ご自身が今どれくらいの資産を持っているのか、全体像を把握することから始めます。
- 預貯金: 普通預金、定期預金など、銀行や郵便局にあるお金です。
- 保険: 解約返戻金がある保険など。
- その他: 個人年金保険、株式、投資信託など、金融機関にあるもの。不動産など。
これらを紙に書き出すだけでも良いですし、通帳や証券会社の残高を確認してみてください。大切なのは、全体として「これだけのお金があるんだな」と把握することです。
ステップ2:毎月の支出を把握しましょう
次に、普段の生活で毎月どれくらいのお金を使っているのかを確認します。
- 基本的な生活費: 食費、光熱費、水道代、通信費など。
- 趣味・娯楽費: 趣味にかけるお金、友人との交流費など。
- その他: 医療費、お小遣いなど。
家計簿をつけている方はそれを見直してみましょう。もし家計簿をつけていない場合でも、通帳の記録を遡って確認したり、数ヶ月だけでも簡単に記録してみたりすることで、おおよその金額が見えてきます。毎月どれくらいの支出があるのかが分かれば、それを賄うために、年金やその他の収入に加えて「あといくら資産を取り崩せば良いか」が見えてきます。
ステップ3:今後の大きな出費をリストアップしてみましょう
今後、まとまったお金が必要になりそうな予定はありませんか?
- 家のリフォーム: バリアフリー化や設備の交換など。
- 車の買い替え:
- 旅行やレジャー:
- 医療や介護: 予想外の病気や介護が必要になった場合など。
- その他: お孫さんへの贈与や、万が一の葬儀費用など。
現時点で確定していなくても、「もしかしたら必要になるかもしれない」ということも含めて、思いつくものをリストアップしてみましょう。そして、それらに備えるための「予備費」として、すぐに使えるお金をある程度手元に置いておくことをお勧めします。
資産の取り崩し方、何から手をつける?
資産全体を確認し、毎月の支出と将来の大きな出費を把握できたら、いよいよ「何から取り崩していくか」を考えます。一般的には、すぐに現金化できる「預貯金」から使っていくのが分かりやすいでしょう。
定期預金などは、満期が来たら生活費に充てる、といったように、計画に組み込むと良いかもしれません。株式や投資信託などの金融商品、あるいは不動産などは、すぐに現金化するのが難しかったり、価値が変動したりします。これらを売却して現金化する場合は、市場の状況なども考慮に入れる必要があります。まずは、手元の預貯金から、毎月の生活費に必要な分を取り崩していく、というシンプルな形から始めるのが良いでしょう。
計画は見直しながら進めましょう
一度計画を立てたら、それで終わりではありません。生活状況や必要な支出は、時間の経過とともに変わっていきます。数ヶ月に一度、あるいは年に一度など、定期的にご自身の資産状況や家計の状況を見直し、必要に応じて計画を調整していくことが大切です。
不安な時は専門家や相談窓口へ
ご自身だけで考えるのが難しいと感じる場合は、専門家や公的な相談窓口に相談することも一つの方法です。市町村の窓口や、地域包括支援センター、金融機関、ファイナンシャル・プランナーなど、お金や暮らしに関する相談ができる場所はたくさんあります。「知っておきたい:老後の不安や困りごとを相談できる場所」という記事でも詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ:安心のために、できることから始めましょう
老後資金を計画的に取り崩すことは、難しく考える必要はありません。まずは、ご自身の資産と支出を「見える化」し、今後必要になりそうな大きな出費をリストアップすることから始めてみましょう。そして、手元の預貯金から、毎月の生活費に必要な分を少しずつ取り崩していく。これだけでも、資金の管理がしやすくなり、漠然とした不安を和らげることができます。
計画を立てることで、ご自身の資産がどれくらい長持ちしそうか、おおよその見通しが立ちます。それは、日々の生活に安心とゆとりをもたらしてくれるはずです。できることから少しずつ、安心できる将来のために、大切な資産を計画的に活用していきましょう。