ゆとりの老後を叶える第一歩:老後資金の「見える化」と資金寿命
老後のお金の不安を和らげるために
豊かな老後を送る上で、お金に関する不安はつきものかもしれません。「いまの蓄えは、いつまで持つだろうか?」「大きな病気をしたら、医療費はいくらかかるのだろうか?」といった漠然とした心配を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
お金に関する不安を和らげるためには、まずご自身の状況をしっかりと把握することが大切です。その第一歩として、「資金寿命」という考え方を取り入れて、老後資金を「見える化」してみましょう。
「資金寿命」とは?
「資金寿命」とは、簡単に言うと、今ある貯蓄や資産が、これから先の生活費や予期せぬ出費に対して、あと何年くらい持つかを示す考え方です。
例えば、毎月の生活費が一定だと仮定した場合、貯蓄総額を月々の生活費で割ることで、おおよその月数が計算できます。もちろん、実際には生活費は変動しますし、年金収入もありますから、単純な計算だけでは正確な資金寿命は分かりません。しかし、このように具体的な数字で「見える化」することで、漠然とした不安が少しずつ和らいでいくことがあります。
老後資金を「見える化」する方法
では、どのようにしてご自身の老後資金を「見える化」すれば良いのでしょうか。
一番基本的なステップは、毎月の収入と支出を把握することです。
- 収入を書き出してみる: 毎月受け取る年金の額や、もしあればパート収入などを書き出してみましょう。
- 支出を把握してみる: 食費、水道光熱費、通信費、医療費、趣味・交際費など、毎月かかるお金を書き出してみましょう。レシートを一定期間集めてみたり、家計簿をつける習慣がない場合は、1ヶ月だけでも試してみてはいかがでしょうか。
収入と支出が把握できたら、「収入合計 − 支出合計」を計算してみてください。もし収入よりも支出が多い場合は、毎月貯蓄が減っていくことになります。この毎月の赤字額と今の貯蓄額から、「あと何ヶ月くらい現在の生活を続けられるか」というおおよその目安が見えてきます。
もちろん、これはあくまで非常に単純な計算です。実際には、数年ごとに生活費の見直しが必要になったり、医療費や介護費用といった大きな出費が発生する可能性もあります。
不安を安心に変えるための考え方
資金寿命の「見える化」によって、もしかしたら「思ったより早くお金が尽きてしまうかもしれない」と感じて、かえって不安になる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは決して悲観するためのものではありません。現状を把握できたからこそ、これからの対策を考えることができるのです。
- 収支を見直す: もし毎月赤字が出ているのであれば、まずは支出を見直してみましょう。「本当に必要な出費だろうか?」「削れる部分はないだろうか?」といった視点で、無理のない範囲で見直しを検討してみてください。
- 公的な制度を活用する: 医療費が高額になった場合に利用できる「高額療養費制度」など、公的な支援制度は複数あります。これらの制度について知っておくことで、いざというときの経済的な負担を軽減できます。ご自身が利用できる制度について、市区町村の窓口や地域包括支援センターなどに相談してみるのも良いでしょう。
- 資産の活用を検討する: 自宅や土地といった不動産をお持ちの場合、それをどのように活用していくかも選択肢の一つです。住み続けることを希望する場合でも、リバースモーゲージといった仕組みや、自宅の一部を賃貸に出すといった方法が考えられるケースもあります。ただし、資産の活用にはメリットだけでなく注意点もありますので、慎重に検討し、専門家や信頼できる機関に相談することが大切です。
- 働き方を考える: 健康状態が許せば、無理のない範囲で働くことを検討することも、収入を増やし、社会とのつながりを保つ一つの方法です。シルバー人材センターや地域の求人情報などを調べてみるのも良いでしょう。
お金以外の「ゆとり」も大切に
老後の「ゆとり」は、お金だけで決まるものではありません。健康な毎日、家族や友人、地域とのつながり、そして日々の生活に張り合いを持たせてくれる生きがいも、心の豊かさには欠かせない要素です。
資金計画を考えることは大切ですが、それに捉われすぎて、せっかくの老後を楽しむ機会を失ってしまっては本末転倒です。お金の「見える化」と同時に、ご自身の心身の健康や、地域との関わり方についても目を向けてみましょう。地域の公民館活動に参加してみたり、ボランティア活動を始めてみたりするのも、新しい発見や生きがいにつながることがあります。
まとめ
老後資金の「資金寿命」を「見える化」することは、ご自身の現状を把握し、漠然とした不安を具体的な課題として捉えるための有効な手段です。計算が難しく感じる場合や、複雑な状況の場合は、完璧を目指す必要はありません。おおよそで構いませんので、まずはご自身の収支を把握することから始めてみましょう。
もし、具体的な対策について専門的なアドバイスが必要だと感じられた場合は、お近くの消費生活センターや、必要に応じてファイナンシャルプランナーといった専門家に相談することも選択肢の一つです。また、年金や医療、介護など公的な制度については、市区町村の窓口や社会福祉協議会などが情報提供や相談に応じてくれます。
お金に対する不安を抱え込まず、ご自身のペースで、一歩ずつ未来設計を進めていくことが、ゆとりある老後につながるのではないでしょうか。